永平寺が目指す「修行」とは、道元禅師の禅風を身に付けた人材の育成です。永平寺の修行について、よく「七百八十年変わらぬ‥」と言いますが、厳密には時の変遷と共に様々な変化がありました。
今、「修行道場の継承」と申しますのは、変わってはならないものは何か、時代即応的に変わらなければならないものは何か、この二つの命題を明らかにし、時代に応じて世に確かな法灯を掲げうる人材を養成し続けることであります。
かつて出家の意味は「出世間」であり、正に親を捨て親族知己とも縁を断って修行者となりました。しかし、現代は一定年数修行すると、育てられた寺に戻り住職になるべく歩み出すのが一般的です。
永平寺は、厳しい修行道場でありながら、大事な寺院継承者を預かってもいるのです。修行期間が短期化する中、お釈迦さまのお覚りを継承される道元禅師さまの「正伝の仏法」を修行僧に伝えることは容易ではありません。
高度経済成長期から平成の始めにかけて、永平寺には大挙して参籠参拝・観光の人々が押し寄せ、修行僧もその対応に追われたものです。しかし今はその数も当時の三分の一になっています。修行道場としては、道元禅師さまが示された本来の修行に立ち帰る好機と捉えています。
行住坐臥の四威儀、三時の勤行四時の坐禅を丹念につとめられるように指導して参ります。その上で、道元禅師さまの時代とは大きく変わった人心や世相に鑑み、修行僧一人一人が「行」と「学」を通して智慧と慈悲を身に付けた僧侶となれるよう適切な指導を心懸けて参ります。その方策の一つとして、既に山内役寮と山外有識者による「僧堂教育評議会」を設け、僧堂教育において伝統的なものを堅持しながらも時代相応の視点を加えるべく着手しております。
衆人が認めうる、確かな禅僧を育成することこそ、永平寺の「修行道場」たる所以(ゆえん)であります。
